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動画で見る “京の冬の風物詩” 千枚漬の伝統製法「かんながけ」

秋の昇龍祭で、千枚漬の伝統製法を再現

山紫水明の地で豊かな地下水に恵まれた京都では、多種多様な野菜が育まれ、豊かな漬物文化が発展してきました。なかでも「千枚漬」は、すぐき、しば漬と並ぶ京都三大漬物の一つです。

昨秋、京都 嵐山にある商業施設「昇龍苑」で〈秋の昇龍祭〉が開催され、その中でもご好評をいただいたイベントの一つが千枚漬の伝統製法「かんながけ」の実演

薄切りにした聖護院かぶらを何枚も重ねて漬け込む昔ながらの伝統製法を、この日再現しました。当日は実演だけではなく、小さなお子様からご年配の方まで「かんながけ」の体験をお楽しみいただき、多くの方々で賑わいました。

“京の冬の風物詩” ともいわれる「千枚漬」の仕込み風景、今回はその様子の一端を動画でお届けします。


生まれも育ちも京都、 千枚漬の知られざる歴史

現在は、京都土産や贈答品としても親しまれ、京漬物の代名詞ともいえる「千枚漬」ですが、その歴史をご存知でしょうか?

「千枚漬」の歴史は150年余り、江戸時代までさかのぼります。現在の千枚漬に近いものができたのは江戸時代末期、御所の料理人が宮中の献立としてつくったものが始まりといわれます。千枚漬は、他の漬物と違って長期保存を目的とせず、繊細に漬け込みます。当時、その純白で美しい見た目や上品な味わいから御所の殿上人からも愛されたそうです。
また明治23年に京都で開催された全国博覧会では全国名物番付けに入選し、以来、京都の三大漬物の一つに数えられています。

その名の由来は、千枚といえるほど薄く切って作ること、もしくは「樽の中に千枚はあるはずだ」と噂が立ったからだと伝わります。

古今、人々を夢中にさせる美味しさの秘訣

きめ細やかな食感と、みずみずしい風味が絶品の千枚漬。その京都らしく上品な味わいは、どのようにして生まれるのでしょう。その一連の流れをご紹介します。

かんながけ
その製法は、京野菜「聖護院かぶら」をきれいに洗って皮をむき、専用のかんなで薄く削ってゆく「かんながけ」からはじまります。

聖護院かぶらを薄く削ってゆく「かんながけ」。一見、簡単そうに見えるのですが……均等な厚さに削ってゆくのはなかなか難しいんです。

塩かげん
「かんながけ」されたかぶらは、樽の中にきれいに並べられて、一段ずつ塩をふって漬け込まれます。ここではその時のかぶらの状態に合わせた絶妙な「塩かげん」が大切になります。

味の決め手となる「塩かげん」は職人の腕のみせどころ。長年培った勘が必要とされる工程です。

下漬と本漬
塩ふりを終えると、重石を乗せて、約2~4日間の「下漬」をした後、十分に水を切り、さらに昆布や酢などで味を整える「本漬」を行います。約2~4日間かけて味がなじむと完成です。(下漬、本漬の日数は、製造場所の温度によって異なります)
このように千枚漬は、職人の丁寧な仕事の積み重ねによって生み出されてきました。

重石にかけられる前の下漬の様子。

「聖護院かぶら」の質を大切にした西利の千枚漬

おいしい漬物の命は、おいしい野菜。西利の漬物づくりは、千枚漬の原料となる京野菜「聖護院かぶら」の質も大切にしています。
西利の千枚漬に使用される聖護院かぶらは、天候などの環境に合わせて、追肥(野菜の生育に合わせ、必要な栄養を補うために追加で施す肥料)を施し、一つひとつのかぶらに愛情を込めて育てています。

西利の直営農場では、現地の産地開発スタッフと契約農家の方が二人三脚になって野菜を育てています。

伝統の技を受け継ぎつつ、現代に合わせた創意工夫を

私たちは、京漬物の伝統的な製法や味わいを守っていく一方で、常に顧客ニーズを取り入れた商品を提案していかなければなりません。現在、千枚漬の製法は機械化もされておりますが、西利では昔ながらの伝統を伝えることを目的として、伝統製法「かんながけ」の実演や体験会を実施しています。

「伝統」を守るということは、先人たちから受け継がれてきた知識や技術を習得するだけではなく、時代に合わせた新たな創意工夫を積み重ねることが必要です。それでこそ「伝統の技が、現代に生きる」と西利は考えています。

たとえば、リサイクル材であるパルプモールドを活用した千枚漬のエコパッケージを開発したこともその一例。
当時、千枚漬のパッケージには、木の樽を使うことが常識でしたが、西利は自然環境に配慮することを優先し、省資源・実用的なエコパッケージの採用をしました。

エコパッケージは、1993年に「メイドイン京都ベストデザイン大賞」を受賞。

真冬の味を真夏の祇園祭に

本来、千枚漬には「旬」があり、市場に出回るのは、聖護院かぶらが収穫される晩秋から冬の限られた期間のみですが、西利は長年、野菜に対する基礎研究と職人が培ってきた勘やコツを数値化し分析したことから、野菜貯蔵システムの新技術を開発し、本来は秋冬の商品である千枚漬を年中通して製造できるようになりました。

しかしながら、優れた技術を開発したとしても、京漬物には季節感があり、「旬」を大切にする気持ちを失ってはいけません。西利は「旬」の大切さを守るため、秋冬以外では、祇園祭の宵山から巡行までの期間のみ「夏の千枚漬」として皆様にご提供しています。
毎年、夏のひとときに涼やかな真冬の味を楽しんでいただける千枚漬は、多くのお客さまからご好評をいたただいています。

「エコパッケージ」や「夏の千枚漬」は、すべて西利の社業の目標であるを追求した結果から生まれた商品です。これからも私たちは、その伝統と職人の技を大切に受け継ぎつつ、環境への配慮や研究開発など時代のニーズとともに新しい漬物づくりに励んでいきます。

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