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インタビュー西利のひと

牛乳パックの中からお漬物!? 西利が提案する「1日20gの食習慣」

京都の伝統漬物「すぐき」から発見されたラブレ乳酸菌。このラブレ乳酸菌を、暮らしの中で無理なく摂れるようにと開発されたのが、西利の健康漬物「西利乳酸菌ラブレ」シリーズです。
そして、より気軽に、より楽しく続けられる食習慣を目指して発売されたシリーズ新商品「乳酸菌ラブレ20g 7日間セット」が、第20回福岡デザインアワード大賞を受賞しました。

全国の逸品が集う九州のデザインコンペティションで、京都の漬物がなぜ1位に輝いたのか、新商品の発案者である西利の平井誠一社長と、西利の研究室に勤務する柳田研究員(取材時)が開発の思いと受賞までの道のり、これからを語りました。

平井 誠一
2013年「京つけもの西利」代表取締役社長に就任。現在に至る。「旬 おいしく、やさしく」をテーマに、時代に合わせたお漬物を提案し食卓に届け続けている。京都市未来まちづくり100人委員会代表や京都市基本計画審議会融合委員会副委員長、京都文化祭典連絡協議会座長を務める。

柳田 洋平
近畿大学大学院 農学研究科バイオサイエンス専攻卒業。2011年「京つけもの西利」に入社し、ラブレ室、包装室を経て西利洛西工場の研究室に勤務。「乳酸菌ラブレ20g」の商品開発に携わる。

コンセプトとデザインが響き合う商品

ー早速お伺いしますが、なぜ京都の漬物屋である西利が九州で開催される「福岡デザインアワード」に応募されたのですか?

それはね、常連のお客さまから応募してみてはどうかとおすすめがあったんですよ。

ーそうだったんですか!

最初は、福岡のコンペに京都の企業が参加してもいいものかと思ったんですが、福岡と全国の商品が切磋琢磨することを目的に、前年から全国公募が始まったところだったので思い切りましたね。

ー他県からは初めての大賞受賞とのことですが、知らせを受けていかがでしたか?

素直にうれしかったですよ。何よりうれしかったのは、単にパッケージのデザイン性だけでなく、日本人の食生活に対する提言がなされていることも評価されたことです。我々の努力と思想が実った瞬間だという感覚を覚えました。

福岡デザインアワードは、企業のデザイン力の向上と生活者のデザインマインドの高揚を目的に平成11年から開催されている。国内に事業所をおく中小企業者等が製造・販売する商品・サービスの中から、市場性を有し、オリジナリティの高いデザイン性に優れたものが表彰される。

今回、大賞を受賞した商品の「乳酸菌ラブレ20g 7日間セット」

ー今までのお漬物にはなかったパッケージですね。まず商品の企画意図はどのようなものでしたか?

やはり我々は、漬物という食文化を正しい形で伝えていきたいと常々考えています。その一方で時代の流れとともに世の中が求めるものは変容します。野菜と乳酸菌をいかにおいしく食べるかとか、発酵の大切さとか、和食とどう向き合うか、食生活のスタイルの変化に合わせて伝えるきっかけになるものが必要だと考えていました。

ーそこからデザインの発想につながっていったのですね……。

そうです。これまでも科学的根拠をもってラブレ乳酸菌を漬物に活用してきました。しかし大切なのは、毎日続けること。習慣化してもらうことが大事なんですよ。たとえば、乳酸菌を摂るのに、毎日ヨーグルトを食べる方が多いですよね。それと同じように漬物を見直してもらおうと思ったら、食べやすくて、習慣化できて、かわいいと思ってもらえることが必要になり、結果あのような爽やかで優しいイメージが決まったんです。

お漬物の種類は、らっきょう、古漬胡瓜きざみ、しそなす、古漬キャベツと人参、古漬壬生菜きざみ、本干沢庵、瓜きざみ、大根きざみ

ー小さなカップが可愛いですね。なぜ20gなのですか?

20gのカップにしたのは、その中に約1千万から1億個の乳酸菌が含まれており、1日に十分な量だと考えたからです。20gなら朝食でも晩酌でも気軽に食べれますよね。お漬物の種類は全部で8種のバリエーションがあるので、味や食感の違いも楽しんでいただけます。

ーカップにはいろんな意味が詰まっているのですね。

新しいものですからね、これまでの商品のラインナップとは違うものにしたかったんですよ。ナチュラル、安心、やさしさ。西利のテーマであるを若い女性にわかりやすく伝えるメッセージ性を追求しました。デザイナーと相談しながらボタニカルアートのイラストが決まり、そして、毎日味を変えられる一週間セットを作ることになったんです。

ーおしゃれな紙のケースに入っていますね。

ライバルはヨーグルトですからね(笑)。ヨーグルトのように毎日冷蔵庫に入っているものを考えて牛乳が思いついたんです。思い切ってケースを牛乳パックの形にしてみようと。

ー下のほうにあるミシン目を切り取った窓から、1カップずつ取り出すアイデアもおもしろいですね。

それはね、僕の遊び心(笑)。すぐにパッケージが捨てられるのではなく、毎日1パックずつ取り出し、最後の1個を食べ終えるまでこのパッケージを残しておけるのも楽しいかなと考えたんです。

20g入りカップの中には約1億個のラブレ乳酸菌

ー中身のお漬物に使われている「ラブレ乳酸菌」に関して、柳田さんに色々お伺いできればと思います。

「ラブレ乳酸菌」は1992年、ルイ・パストゥール医学研究センターの岸田綱太郎博士によって、伝統漬物の「すぐき」から発見された乳酸菌のことです。

ー意外なところから発見された乳酸菌なのですね。

その通りです!乳酸菌が体内で生きている期間は最大でも3日ぐらいなので、連続摂取が望まれます。

ー商品の開発秘話があれば教えてください。

やはり品質管理ですね。
1日に十分なラブレ乳酸菌を得るためには、20gカップの中に約数千万から1億個あることが必要なんです。実際にそれだけの数が含まれているのか、完成後も常に検査をしていますよ。
「1億個も数えられるの?」と思われがちですが、生理食塩水を用いた段階希釈で、その都度数を確認し、それを7~9回繰り返すことで証明が可能です。

ーその検査はどのくらいの頻度で行うのですか?

商品は毎日製造していますから、もちろん検査も毎日しています。毎日しなければ、お客さまに嘘をつくことになります。
西利には、ラブレ乳酸菌について30年にわたる膨大なデータがあるので、菌のコントロールにミスはほぼ起こりません。しかしその菌の数に問題があれば、それは入れ忘れなど人為的なミスが原因です。今日までミスは起こっていませんが、毎日検査するのは、お客さまに約束していることを実行するということ。信頼されるブランドであるためには必要なことなのです。

ー健康な食を求めるお客様の願いに応えるため、開発の裏側にそんな苦労があったとは…!

 

 

食のバランスを整え、健康と笑顔を届けたい

ーそもそも、平井社長が健康的な食生活に興味をもつようになったきっかけは何ですか?

我々、漬物屋としては残念なことですが、漬物の消費量は減少傾向にあるんですね。野菜と乳酸菌をおいしく食べられて、かつ健康にもいい。こんなに素晴らしい食べ物の魅力を何でわかってくれへんのやという思いがあったんです。漬物を含む和食は、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。喜ばしい反面、「遺産」として保存していかないと残らないものなんだという危機感を感じました。それを契機に、和食や漬物がもつ健康食としての魅力を訴え直さなければ……と思ったんです。

ー現代の若者は、食の乱れがあると言われますね。

うーん、その質問は困るなぁ……(笑)。
若者の食生活の価値観をつくってきたのは、その親の世代です。それに、時代に応じて食は変化するものですから、一概に「食生活の乱れ」というのは難しい。ただ、食のバランスが崩れているとは感じていますね。
核家族化によって、自分の好きなものしか食べない人が増えた背景があります。かつては三世代同居でしたから、多様な世代に合わせて食卓が豊かだったわけです。たとえば、おじいちゃんが好きな漬物を、孫が食べてみる機会が生まれたりね。現代より、主食・主菜・副菜とバランスがとれていたのではないでしょうか。

ーこれから新たに目指すことは?

バランスの良い食事をとっていただくために、我々が企業として何ができるかを考え、食生活のスタイル提案をしていかないといけないと思います。企業として複数の柱を作り、全てに共通するものとして「発酵」を据える。発酵をキーワードに様々な角度から提案し、食卓に健康と笑顔をお届けする総合食品メーカーを目指していきたいと思います。

僕は、直近の目標として20gカップのバリエーションを増やしたり、賞味期限を延ばしたりすることですね。今以上に、お客様に安全においしく楽しんでいただけるような商品を送り出していきたいと思っています!

ー本日はありがとうございました。

 

福岡デザインアワード公式サイト

https://award.fida.jp/

 

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