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インタビュー
住民全員小学生!?︎ “京都市スチューデントシティ”に潜入してみた!
京都市には、住民が全員小学生の街があることをご存知ですか?
「スチューデントシティ」と名付けられたその街では、京都市の小学生が「1日社会人体験」をおこなっているのだそう。働くのも、買い物をするのも、納税(!)をするのも、すべて小学生!
「内部の様子はどうなっているの?」「普通の仕事体験とはどう違うの?」といった疑問を解決すべく、今回は特別に潜入してみました!レポート&インタビューを通して、「スチューデントシティ学習」の取り組みをご紹介します!
※「スチューデントシティ」は、経済教育団体である「ジュニア・アチーブメント」の教育プログラムです。
ジュニア・アチーブメント HPはこちら
【この記事の主な内容】
・「スチューデントシティ」って?元中学校校舎に再現された「街」
・住民登録に納税、他社との契約……とにかく本格的な体験内容
・スチューデントシティは「教室とは違う一面が見られる場所」
・西利も協力!産学公が連携する京都市の教育活動
「スチューデントシティ」って?元中学校校舎に再現された「街」
京都府庁の近くに建つ「京都まなびの街 生き方探究館」。
目を引く「生き方探究館」の文字。もとは中学校の校舎として使われていた建物です。
ここにあるのが今回潜入する”仮想の街”、その名も「スチューデントシティ」 。
一歩入ると立ち並ぶブース。そのまま街に建っていても違和感のないクオリティ。
スチューデントシティ内では、小学生が「1人の大人」としてあつかわれ、ものやサービスを「受ける側」と「供給する側」を交互に体験。学校での事前学習・事後学習とあわせて、社会と自分とのつながりについて考えてもらおうというのが、今回ご紹介する「スチューデントシティ学習」です。
この体験プログラムは、京都市内の小学校の授業の一環として実施されており、西利もオープン時からブースを出店しています。
「京つけもの西利 スチューデントシティ店」
今回はその模様を見学させていただき、「京都まなびの街生き方探究館」指導主事の葉山さんと、スチューデントシティの現場に携わる弊社の小山のお二人にインタビュー。
「教える」ということは「学ぶ」ということ。そんなことを感じた「スチューデントシティ」の潜入レポート&インタビュー。ぜひ最後までお楽しみください!
葉山 みどり(写真左)
京都市教育委員会 京都まなびの街生き方探究館 指導主事。京都市全体のキャリア教育、生き方探究教育の推進に携わる。
小山 美代志(写真右)
1997年「京つけもの西利」に入社。営業販売を経て、現在は企画開発グループの主任。スチューデントシティの現場に携わり、西利ブースでは1日を通して子どもたちをサポート。
住民登録に納税、他社との契約……とにかく本格的な体験内容
ー本日は、よろしくお願いします!
こちらこそ、よろしくお願いします。
ー見学させていただいて驚いたんですが、予想以上に「本物志向」なんですね。住民登録や納税など、「そこまでやるんだ!」と驚きました。
そこまでやります(笑)ユニフォームも実際と同じデザインなんですよ。
1日の最初にするのが区役所での住民登録と銀行での口座開設。
ユニフォーム姿は、一瞬小学生とはわからない⁉︎
使用機器も本格的です!
ー「1日社会人体験」はどのような内容なんでしょう?
各ブースの子どもたちが、「社員(職員)役」と「消費者役」を交代で体験します。「社内会議」で業務内容の改善策を話し合ったりもするんですよ。
各ブースの社員には、それぞれ「店長」「会計」「情報処理」など、異なる役職が。
他の会社と契約を結んだり、名刺交換をしたりすることも。
ー「お仕事体験」の枠に収まらないほど本気な内容……!なぜこのような学習がはじまったのでしょう?
当館設立の数年前、京都市の教育界では、ある議論がされていたんです。
ーどのような議論でしょうか……?
学校の勉強と、社会で生きていく力のあいだに、乖離(かいり)があるのではないか?ということです。「社会の仕組みを学び、生きていく力を育てよう!」という動きの先駆けとしてはじまったのが「スチューデントシティ学習」なんです。
ー10年以上続くプログラムですが、当初と今とで、なにか変化はありますか?
活動内容に大きな変化はありませんが、子どもたちへの「大人の関わり方」が大きく変化しています。
ー「大人」というと、ブースにいらっしゃるサポート役の社員さんや地域ボランティアの方ですよね。どのように変化したのでしょう?
子どもたちの主体性をより大切にするようになりました。社員の方やボランティアの皆さんには、答えを教えるのではなく、子どもたちが考えるきっかけになるような言葉がけをすることをお願いしています。
お漬物の売り方を考えるためにパッケージ裏の原材料までしっかりチェック。
ーそれってかなり難しいですよね。つい「こうしたほうがいいよ!」って言いたくなってしまいそう……。
ええ、なのでボランティアの皆さんには「正解を出していただかなくていいです」とお伝えしています。
私も子どもたちをサポートする側として、大切なのは正しい答えを知ることではなく、子ども達が自分の力で気づくということだと思います。困ったことが起きても、考えるのはあくまで子どもたち。一歩引いて接することを心がけています。
ー大人の役割は、子どもたちの出した答えに寄り添うことなんですね。
そうなんです、だから日によって呼び込みの言葉も違うんですよ。それは大人から「これを伝えなさい」っていうことを教えないからなんです。
「お父さんのお酒のおつまみにお漬物はどうですか〜!」という、大人顔負けの売り文句も。
「ホワイトボードを使ってみるなど、子どもたちなりの工夫を目の当たりにすると、鳥肌が立つような感動がありますね」と小山さん。
ー子どもたちの成長ぶりにも驚きました。最初と最後で別人のようになる子もいて……。
子どもたち同士で刺激しあっているからこその成長だと思います。『あのお店のこういう方法がよかったからうちでもやってみよう』という意見が自然に出てくる。周りからどんどん吸収する姿勢は、逆に私自身も学ばなければいけないところだと思います。
気づいた問題について話し合う子どもたち。接客も会議の内容も、1日を通してレベルアップ。
スチューデントシティは「教室とは違う一面が見られる場所」
ー最後の社内会議で、小山さんが子どもたちひとりひとりにコメントしていたのが印象的でした。
「元気な呼び込みで、みんなのモチベーションをあげてくれましたね!」、「丁寧に在庫チェックをするなど、責任感を持って取り組んでいることが伝わりました!」と、ひとりひとりにコメント。
活動を通して、全員の良いところを見いだしてあげたいと思っています。それを伝えることで子どもたちの自信に繋がったらいいな。
ー教室ではわからなかった一面がみえることもありそうです。
担任の先生からは「普段は喋らない子が積極的に喋っていて驚きました」とか、「いつもやんちゃな子がすごく優しさを発揮していて……」というコメントをよくいただきますね。
それができるのは、ここの大人の方が丁寧に関わって、見てくださっているからこそなんだと思います。
ー学校での姿が全てではないということですね。
その通りです。逆に優等生といわれる子が苦労するということもあります。学校での勉強とは違う、正解のない問題にぶつかって自信を持てなくなってしまうんです。
ー自信を失って今後に悪い影響が……なんて心配はないんでしょうか?
先生から『じゃあ次はどうしたらいいのか考えよう』っていう働きかけをしてもらえたら。自分の弱さに気付けたというのはとても大事なことなので、その日の出来事をプラスに変えてほしいですね。
西利も協力!産学公が連携する京都市の教育活動
ーこのような学習は、他の自治体でもおこなわれているんですよね。京都市ならではの特色はあるんですか?
他都市だと企業と学校ボランティアさんが協力するかたちなんですが、京都市では市民の方にも入っていただいています。地域で子どもたちを育てる姿勢が京都市らしさです。
弊社の代表取締役会長である平井義久(以下:平井会長)が「スチューデントシティ・ファイナンスパーク運営推進委員会」の委員長を務めるなど、西利も2006年の委員会発足時から協力させていただいています。初代館長が、堀場製作所で最高顧問を務められていた故堀場雅夫さんなんですが、平井会長には堀場さんの方からお声がけがあったと聞いています。
ーそれはなぜでしょう?
会長の周りを巻き込むパワフルさと、役割を誠実に果たす点を評価していただいたのではないでしょうか。スチューデントシティの実現には、多くの企業の協力が不可欠だったんです。
ースチューデントシティ以外の部分だと、西利は地域の教育にどのように関わっているのでしょうか?
前述の平井義久が、NPO法人「芝生スクール京都」の理事長を努めさせていただいたことにより、西利としても理念に賛同し、関わりを持たせていただきました。そのほか「チャレンジ体験」という職場体験で、地域の学校の生徒さんの受け入れをおこなっています。
京都市内の幼稚園や学校の校庭を芝生化を進める認定NPO「芝生スクール京都」
芝生スクール京都 HPはこちら
ー地域全体で子どもたちを育てるために、私たち大人も共に成長しなければいけませんね!
先ほどお話ししたように子どもの主体性を大切にしてあげてほしいです。それには大人側のゆとりも重要だと思います。子どもの可能性を信じた関わり方をしていけたら。
ーでは最後に、お仕事のやりがいや今後の目標について教えてください!
スチューデントシティ学習では、いつも自分が勉強しに来ているような感覚なんです。ここで吸収したことを、会社の他の仕事にもつなげていきたいですね!
京都市のキャリア教育は、子どもたちが社会の中で自分らしく生きていってほしいという願いをこめておこなわれています。のびのびと、より幸せに自分らしく生きていけるように子どもたちを育てていくことが今の使命です。
ーお二人とも、ありがとうございました!
ありがとうございました。
店長さんから給料の受け渡し。懸命に取り組んだみなさん、おつかれさまです!
体験学習終了後、参加した子どもたちに今日の感想を聞いたところ、
「声をかけてもお客さんが来てくれなかったときは大変だったけど、ランキングやおすすめ商品をボードに書くことで買ってくれる人が増えたときは嬉しかった。大人になっても工夫して働いていきたいです」
「自分で稼いだお金で買い物をしたり、住民税を納めたりしてみて、お金がどのように社会を回っているかがわかりました」
といった声を聞くことができました。
いつもの教室とは違う環境で、いくつもの壁を乗り越えた小学生のみなさん。
全てのプログラムを終えたあとの達成感に包まれた表情が印象的でした。